ZEBは「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略であり、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物を意味します。
省エネによって建築物で使用するエネルギー量を減らしつつ、創エネ施設で使う分のエネルギーを作り出し、エネルギー消費量をネット(正味)でゼロにします。
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ZEBの概要
全国ではすでにGHP等のガス空調やガスコージェネレーションシステム(以下、コージェネ)を活用してZEBを実現した「ガスZEB」が続々と増えており、新築のZEBだけでなく、老朽化した既存のガス設備を更新する際に建物の省エネ改修と組み合わせてZEB化改修した事例もあります。
ZEBには様々なメリットがありますが、ガス設備を活用することでエネルギー源を多重化でき、レジリエンス性能を向上させられます。特に災害時に避難所となり、一定期間の事業継続を求められる公共施設には、停電対応型コージェネや停電対応型GHPといったガス設備の活用が有効です。
ZEBを実現する上で鍵となるのが、公共施設を含めた事務所ビルや商業施設のエネルギー消費の大半を占める空調と照明のエネルギー使用量の削減です。空調については建物の断熱性能を高め、熱源の高効率化や空調関連制御で消費量を削減、照明は照明設備の高効率化、照明制御等で削減することが重要です。
都市ガス業界はGHPやコージェネ等の高効率化、高性能化に取り組んでおり、これらを有効活用して建築物の省エネレベルをZEB相当に高めることにより、ガスZEBの普及を進めています。
ガス設備を活用してZEB化することで、大きく分けて3点のメリットが挙げられます。
節電対策
近年、電力の需給逼迫が現実の課題となっています。夏季、冬季共に非常に厳しい見通しのため、節電要請も出されるようになりました。一方、異常気象も続いており、快適な環境との両立が難しくなっています。夏季、冬季の電力需要がひっ迫するのは、空調稼働による電力消費の増大が原因の一つです。
そのような中、ガス空調やガスコージェネであれば、電気の使用量を大幅に減らすことが出来るため、節電に大きく貢献します。
また太陽光発電設備、蓄電池との組合せにより高騰する購入電力費用の削減にも貢献し、昼間に発生した余剰電力を夜間にシフトすることも可能となります。
1日の電力カーブイメージ
排熱の有効利用
コージェネは、発電と併せて排熱を活用するエネルギーのカスケード利用により、高い省エネ性能を発揮します。この排熱を利用し、給湯用エネルギー消費量の削減や、排熱投入型吸収冷温水機(ジェネリンク)との組合せで暖房だけでなく冷房のエネルギー削減にも寄与し、更なる省エネの推進に貢献します。
建築物省エネ法上の省エネ性能の評価において、コージェネは太陽光発電設備と同様に「エネルギー利用効率化設備」として評価されています。建物全体のエネルギー消費量の計算上、コージェネによる消費エネルギー削減量はマイナスカウントされます。
レジリエンス性能向上
都市ガスインフラは耐震化率の向上等により、大震災における供給支障件数が減少し、復旧期間が大幅に短縮しています。また近年急増する台風や豪雨による風水害に対しては、他のインフラに比べて供給支障件数が圧倒的に少なく、災害時のエネルギー供給継続性が高いことが改めて注目されています。
自然災害等による停電時にも、都市ガスが供給されていれば停電対応型コージェネは発電と排熱利用が可能です。また停電対応型GHP(ガスヒートポンプ)は空調や発電が可能であり、万一の災害時にも事業継続が可能となります。これらのシステムを採用することで、災害時にも業務継続可能なレジリエンス強化型ZEB※を達成することができます。
※レジリエンス強化型ZEB
建築物等において気候変動による災害激甚化や新型コロナウイルス等の感染症への適応を高めつつ、快適で健康な社会の実現を目指し、停電時にもエネルギー供給が可能なレジリエンスを強化したZEB。(参考:環境省 令和4年度「建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業」)